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食品工場では、作業場に入る前に粘着ローラー(コロコロ)掛けを義務付けている施設が多いです。
その際、以下のような声をよく耳にします。
- 「社員ほど衛生ルールを守らない」
- 「ローラー掛けに10分もかかるのは非効率」
- 「髪の毛が出ていてもチェック表には○がつく」
食品工場におけるローラー掛けは、衣服に付着した毛髪やホコリなどの異物混入を防ぐために欠かせない工程です。しかし、現場では形骸化や形式的な運用が目立つのも事実です。
本記事では、食品製造に携わる経営者・衛生管理者・現場責任者の方々に向け、ローラー掛けの本質的な意義や正しい手順・時間の目安、運用ルールの改善方法までを、現場目線で網羅的に解説します。
衛生管理を「やらされるもの」から「守るべき信頼」へ変えるためのヒントを、ぜひお役立てください。
なぜルールは守られないのか?
ローラー掛けをマニュアル化している企業がほとんどですが、中には作業を軽視している従業員もいます。
では、なぜルールは守られないのか詳しく見ていきましょう。
社員ほどローラー掛けを怠る?形骸化した衛生ルールの現実
「ローラー掛けは、責任者や社員よりもアルバイトの方がよほど真面目にやっている」
このような声が複数の食品工場で聞かれます。
実際の現場では、管理職やベテラン社員がローラー掛けを省略したり、手洗いやアルコール消毒を疎かにしたりする光景が見受けられるケースも少なくありません。
その背景には「忙しいから仕方ない」「今さら誰も注意しない」という甘えや衛生管理に対する意識の低さがあり、衛生ルールが単なる形式になっているからです。
特に現場責任者や管理職が率先してルールを守らない場合、新入社員やパート、アルバイトにも悪影響を及ぼします。
ローラー掛けは“誰のため”の作業なのか。この問いに立ち返ることが、形骸化から脱する第一歩です。
やりがいと衛生の両立は可能か?
食品工場の作業現場に立ち入る際には、更衣後に以下の作業が伴います。
- インナーキャップや帽子の着用(約2~3分)
- マスクの着用
- エアシャワーの通過(15~30秒)
- 粘着ローラー掛け(約30秒~1分)
- 手洗い・アルコール消毒(30秒~1分)
作業前の準備だけで5~6分、混雑状況によっては10分以上かかることもあります。出勤後の更衣時間も含めると、少なくても15~20分前には出勤しなければなりません。
そのため、「30分前出勤が当たり前」「それなのに給料は変わらない」といった不満が蓄積されていきます。
作業の意義を伝えず、時間だけを奪うような衛生ルールでは、現場は納得しません。
従業員のモチベーションを維持するためにも、「ルールを守る」ではなく、「なぜ守るか」を伝えることが、やりがいと衛生を両立できるポイントです。
食品工場でローラー掛けが不可欠な理由とは?
食品工場でローラー掛けが義務付けられている理由を解説します。
毛髪・異物混入が与える工場への深刻な影響
食品工場における異物混入(毛髪)は、クレームや商品回収、取引先からの信用失墜など、企業にとって致命的な損失を引き起こします。
2023年にも、某大手スーパーのPB冷凍食品に毛髪が混入し、大量回収・報道に発展した事例がありました。
厚生労働省や各地の保健所も、異物混入に対しては厳しい姿勢をとっており、製造工程の衛生指導やHACCP義務化のもと、事前の防止策が求められています。
特に毛髪が混入する要因として、以下の特徴があります。
- どこにでも落ちる
- 静電気で付着しやすい
- 見えにくい
このような要因から、ローラー掛けは「極めて有効な物理的除去手段」として位置づけられています。
ローラー掛けは「最後の砦」|HACCP・衛生基準における役割
ローラー掛けは、手洗いやエアシャワーと並ぶ「食品工場の三大衛生対策」の一つとされています。
特にHACCPでは、「クリティカルポイント(重要管理点)」に入る直前の衛生確保が重要視されており、ローラー掛けはその工程を支える重要なアクションです。
作業服や頭髪に付着した毛髪・繊維・微細なゴミは、静電気の影響を受けやすく、エアシャワーを通過するだけでは完全に除去できません。
ローラーによる粘着除去こそが、異物混入の最終バリアとなるのです。
この工程を省略したり、適切な粘着力・かけ方が徹底されていなかったりすると、形式だけの作業になり、結果的に異物を作業現場に持ち込みます。
「面倒だけど、確実」なこの作業をいかに合理化し、継続させるかが、工場の衛生レベルを高めるポイントです。
ローラー掛けの基礎知識と正しい選び方
粘着ローラー掛けを日常的に行っている人は、何も疑問に感じず、一つの作業としてこなしていませんか?
毛髪やホコリなどが除去できればいいというものではなく、作業効率も重要な要素です。
以下では、ローラー(コロコロ)掛けの基礎知識と正しい選び方について解説します。
粘着ローラーのタイプと最適な選び方
食品工場の「粘着ローラー(通称:コロコロ)」は、毛髪やゴミを除去するための必需品ですが、使いづらい製品では次第に使われなくなります。
衛生管理のルールを継続させるには、「誰でも・確実に・ストレスなく使える」ローラー選びが肝心です。
粘着ローラーの選び方は、以下の内容を参考にしてください。
| 選定ポイント | 選定基準 |
|---|---|
| 持ち手の長さ | 一人でも背中全体をロール掛けできる長さ |
| 粘着力 | できるだけ粘着力の強いもの |
| 粘着ロールの幅 | 持ち手が短くても、粘着ロールの幅が広ければ背中全体をロール掛けできる |
| コスト | 強粘着性のロールや本体の素材がステンレス製のものなどはコストがかかる |
粘着ローラーは、一般家庭で使用するモノから業務用まで多くの種類が存在します。特に食品工場では、異物混入の観点から、強粘着性のロールや、一人でも背中までロール掛けできるものがおすすめです。
以前、私がとある食品工場の見学に訪れた際には、「靴底汚れの除去粘着シート」を壁に貼り付けていました。
1人でローラー掛けをする際には、背中まで手が届きづらく、壁の粘着シートに背中を押し付ければ容易に毛髪除去が可能です。上記の粘着シートであれば、汚れたら“剥がすだけ”なので、作業性も考慮されています。
ただし、シート代が高いため、剥がすタイミングの検討は必要です。
また、持ち手の素材は、ステンレスやABS樹脂など、耐薬品性のあるものが衛生的です。
不特定多数の人が触るため、持ち手の洗浄やアルコール消毒は欠かせないからです。
多くの工場で導入されている「アズワン」や「アスクル」が取り扱っている製品の中には、用途別に粘着ロールが色分けされているシリーズも人気です。
作業エリアや導線に合わせた粘着ローラーの種類を選べば、無駄な時間や手間を減らしつつ、異物除去率を高めることができます。
保管・交換タイミングのポイント
粘着ローラーの性能は、「どの製品を選ぶか」だけでなく、保管と交換のルールにも大きく左右されます。
まず、保管時は”ホコリが舞いやすい場所や床付近”を避け、壁掛けや専用ケースに収納するのが基本です。
テープ面が露出したまま放置すると、空気中のゴミが付着し、かえって汚染源になる可能性があるので注意しましょう。
また、粘着力が弱まった状態で使い続けると、除去効果が落ちるだけでなく、粘着テープの「粘りカス」が作業服に付着し、別の異物混入の要因になることもあります。
一般的には「1回のロール掛け=シート1枚」が目安です。
とある工場では、剥がしたシートを専用の記録紙に貼り付けて一定期間保管し、トレーサビリティや衛生管理、従業員教育に役立てていました。
さらに、「スペアがないから交換できない」といった事態を防ぐためにも、月ごとの使用本数を把握し、適正な在庫管理が必要です。
食品工場におけるローラー掛けの手順と時間
この記事を読んでいる方は、ローラー掛けの手順や時間ついては勤務先のマニュアルで定められているため、すでに理解されていると思います。
食品工場への勤務が初めてという方に向けて、私が経験したローラー掛けの手順と時間をご紹介します。
実践!5ステップで完了する基本のローラー掛け
ローラー掛けは、作業区域に入る直前に実施するのが原則です。
エアシャワーの後に実施する工場もあり、静電気の影響を考慮して、ローラー掛け→エアシャワーの順を推奨する声も増えています。
どちらの方法でも構いません。結果的に、衣服に付着した毛髪やホコリなどを作業現場に持ち込まなければ問題ないからです。
基本の流れは、以下の5ステップです。
- 帽子・頭部の周囲(額・後頭部・耳まわり)
- 肩・胸・腕(袖は肘まで丁寧に)
- 背中(できれば他者と交代して行う)
- 腹部・脚まわり(膝から足首まで)
- 作業着のポケットや縫い目、名札周辺
特に注意すべきは、「毛髪が落ちやすい部分」と「静電気で異物が集まりやすい部分」です。
静電気の発生率が高いポリエステル製の作業着や帽子、目視しづらい背中などは重点的に行いましょう。
また、粘着テープの面を使い古したままにせず、途中でこまめにカットして新しい面に切り替えることも重要です。
“常に新しい面で使用する”ことがルール化されていないと、同じ面で複数人が使いまわす事例も見受けられ、異物混入の要因となるので注意してください。
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ローラー掛けにかかる時間と現場導線の見直し
粘着ローラー掛けは、慣れていても1人あたり約1分30秒〜3分程度かかります。
これにエアシャワー(約30秒)や着替え、手洗いなどが加わると、準備時間は10分以上になるのが一般的です。
多くの現場で、「30分前出勤が当たり前」という風潮が生まれる背景には、こうした時間的負担が大きな要因となっています。
しかし、本来のローラー掛けは単なる形だけの“儀式”ではなく、食品の安全を守るために必要不可欠な作業です。
出勤時間や現場への再入室で時間を取られるのは非効率です。そこで見直したいのが、更衣室〜エアシャワー〜作業場までの動線設計です。
たとえば、以下の内容を見直しましょう。
このような工夫を講じれば、作業者の負担を減らしつつ、衛生の質も落とさない仕組みが構築できます。
理想として、「手順は簡潔に、衛生は確実に」を念頭に、効率的な衛生管理に取り組みましょう。
従業員全員が納得するローラー運用のコツ
ローラー掛けを徹底するには、まずは従業員全員にローラー掛けを行う意味を伝え、理解してもらいましょう。
ここでは、ローラー掛けを徹底する運用のコツを解説します。
ルールを守らせるのではなく「意味を伝える」
「ローラー掛け?やってるフリしていれば、責任者や同僚にもバレないし…」
「上の人もやってないから、自分もしなくていいだろう」
こうした言動が現場に蔓延する理由は、ルールの意味が伝わっていないことにあります。
単に「守れ」と言われるだけでは、人は動きません。
ルールを浸透させるには、「なぜ必要なのか」「自分の行動がどう影響するのか」を従業員が納得する形で伝えることが重要です。
たとえば、以下のことに取り組めば「自分ごと」として捉えやすくなります。
- 実際に毛髪混入が発生した製品の写真を見せる
- 回収コストや信用失墜の損害額を数字で示す
また、「異物混入による健康被害や訴訟リスク」の事例を共有することも有効です。
ルールを“作業”ではなく“信頼の証”として伝えることが、最前線で働く従業員の行動を変える第一歩です。
特に管理職やベテラン社員こそ、率先して実践する姿勢が求められます。
私の好きな言葉をご紹介します。山本五十六氏が残した言葉です。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
- まずは、自分が率先してやってみせる。
- 目的や方法を説明する。
- 相手に実際にやらせてみる。
- 「良くできたね」「毎日しっかりやってるね」と相手を褒める。
管理者の立場になると、実際に現場で働く忙しさ、体力的なつらさ、出荷時間に間に合わせようとする精神的ストレス、人間関係など、現場の大変さを実感しづらくなります。
現場作業員は、ルール厳守が評価対象の一つと考えています。そのため、上司や責任者が率先してルール違反を繰り返すと、その現場を見た従業員は「ルールを守らなくても評価されるんだ」と勘違いします。
ルールを守らない従業員は、当然評価が下がります。さらに、上司や責任者、ひいては会社に対する不満も蓄積します。
その結果、優秀な人材ほど早期退職を希望する傾向が強まります。
そうならないためにも、管理者や責任者は、率先してルールを厳守しましょう。
現場の声を活かすルール改善例
ルールは「作る側」が一方的に押しつけるのではなく、「使う側」が納得できてこそ意味があります。
そこで有効なのが、現場の声を反映した運用改善です。
たとえば、ある食品工場では、現場作業員から「ローラーを使うと腕が疲れる」「背中はやりづらい」といった意見が受け、以下のような改善を行いました:
このように、従業員の“面倒くさい”を取り除きつつ、衛生ルールの本質を保つことで、自然と定着率が上がります。
重要なのは、「ルールを守らせる」のではなく、ルールを“自分たちで育てる”意識を持ってもらうことです。意識を改善するためには、現場の声を拾い、フィードバックする体制づくりが運用のコツです。
その他、食品製造業の衛生用品が知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
Q&A|他工場のローラー掛け運用や制服事情について
食品工場のローラー掛けで、よくある質問をご紹介します。
Q1. 他の工場ではローラー掛けのルールはどうなっているの?
多くの食品工場では、作業着着用後・入室前にローラー掛けを実施するのが基本です。
中には、9時半・14時のように定時で清掃スタッフがチェックする方式もありますが、この方法は企業やラインの種類によって異なります。
一般的なローラー掛けの管理方法には、以下のようなバリエーションがあります。
- 自己チェック表で記録を残す(×があれば再ローラー掛け)
- 別スタッフによる「目視+粘着チェック」のダブル確認
- 自動ローラー機器で通過式チェック+記録を自動化
再チェックしない工場では、毛髪が確認されても放置されるリスクが高まり、クレームやトラブルの原因になります。
HACCP対応や保健所の監査を想定すると、“二重チェック+記録の保管”が理想です。
Q2. 髪の毛が出ていたのに、チェック表に○印をつけたら法的問題になる?
重大事故につながれば、法的リスクはゼロではありません。
チェック表は、衛生管理の証拠として保健所やクレーム対応時に提出されることもある書類です。
意図的な虚偽記録や、ルール違反を黙認した結果として健康被害や表示違反につながった場合、会社側・責任者に監督義務違反が問われる可能性があります。
実際に、重大な異物混入が発生し、生産停止・賠償・報道被害にまで発展したケースでは、記録のずさんさが問題視されることもあるので注意が必要です。
そのため、「記録より実行」「正直な報告」を前提とした教育とチェック体制が欠かせません。
記録とは、安心の裏付けであり、形式的につけるものではない点に注意しましょう。
Q3. 事務職の制服の替えがなくてつらい…他の工場では私服通勤や夏服対応はある?
事務職や間接部門の服装事情は工場によってバラつきがありますが、私服通勤+更衣室で着替える方式を採用している工場は一定数あります。
特に最近では、以下のような配慮が進んでいます。
- 夏季専用の涼感素材制服を導入
- 事務員は職場に着いてから着替えることで通勤ストレス軽減
- 女性従業員向けに「半袖+七分ズボン」など選べる制服制
一方で「制服のまま通勤しなければならない」「夏でも冬制服しか支給されない」といった工場も依然として存在しています。
その背景には、事務員用のロッカーがそもそも確保されていないケースがあるためです。
衛生面と従業員の快適性はトレードオフになりがちですが、働きやすさもモチベーションと衛生意識に直結します。
もし、制度に不満がある場合は、実務上の支障や改善提案をまとめて責任者に相談することで、見直しにつながる可能性もあります。
食品工場のローラー掛けの重要性とは?正しい手順と現場が納得する運用法を解説:まとめ
食品工場の衛生管理は、「ルールがある」だけでは不十分です。
ローラー掛けのような基本的な工程こそ、現場全体が納得して実践できる仕組み作りが必要です。
本記事では、以下のポイントを軸に、ローラー掛けの正しいあり方を解説しました。
- 毛髪混入は信用を揺るがす重大リスク
- 粘着ローラーは最後の防波堤として不可欠
- 道具の選定・管理・配置がルールの定着を左右する
- 作業導線や工程の見直しで「時短&確実化」も可能
- 意味を伝え、現場の声を活かすことで自然な運用につながる
現場でルールが形骸化していると感じたときこそ、見直しのチャンスです。
ローラー掛けは単なる“作業”ではなく、製品とお客様、そして働く仲間の信頼を守るための衛生文化です。
まずは、今あるルールの「理由」を伝えることから始めてみてください。そこから必ず、現場は変わりはじめます。


